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学長対談シリーズ 第5回ゲスト:東京外語会理事長 長谷川 康司 さん

第5回ゲスト:東京外語会理事長 長谷川 康司さん

「世界のトヨタ」のアジア部長や専務取締役などを歴任し、道路関係4公団の民営化に伴い、首都高速道路の代表取締役会長兼CEOに就任。その後、東京外国語大学監事を務め、2014年6月、本学同窓会組織である「東京外語会」の総会において理事長に選任されました。本学で学んだことがトヨタ自動車などにおいてどの様に役立ったか、東京外語会の役割や本学への支援、今後の連携についてどのようにお考えか伺いました。


立石博高学長(以下、立石学長) 今日は本学の同窓会組織「東京外語会」の理事長である長谷川康司さんと対談させていただきます。長谷川さん、よろしくお願いいたします。

長谷川康司理事長(以下、長谷川理事長)よろしくお願いします。

立石学長 長谷川さんは、1964年に本学のインドシナ語学科を卒業されて、トヨタ自動車販売に入社、アジア部長、アジア統括の常務取締役を歴任、専務取締役をされて、その後、首都高速道路の代表取締役兼最高経営責任者も務められました。さらに、長谷川さんには本学の監事を2年間務めていただきました。そして、2014年7月より東京外語会の理事長として本学の発展のために様々なご協力をいただいております。まずは、学生時代のお話を聞かせていただけますか。

長谷川理事長 一番困ったことを聞きますね(笑)。正式には「インドシナ語学科」だったのでしょうけど「タイ語科」と呼んでいました*1。タイ語科の同級生は15人前後でした。当時はそのうち女性は1人だけでしたね。学業に関してはあまり良い学生ではなかったですね(笑)。大学生活を通していろいろな経験を積みたくて、様々なアルバイトをしました。今でいえばインターンシップというイメージです。例えば、家庭教師や駐日タイ大使館でアルバイトをしました。

立石学長 それはおもしろいですね。大使館ではどんなことをされたのですか。

長谷川理事長 大使館というか大使公邸でしたが、新聞記事を切り抜くという仕事です。大使館の情報収集のために日本関係の記事を切り抜くお手伝いをしていました。切り抜きの仕事は本当にわずかな時間で終わってしまいますから、あとはタイの子供達と遊んでいました(笑)。当時タイはまだまだ貧しい国でしたから、自分たちの財政でそのような人員を割くことが難しかったのだと思います。

p1.png立石学長 ほかの人にはできないような外大生らしいアルバイトですね。

長谷川理事長 そういうことで雇ってくれたのだと思います。

立石学長 就職活動などはいかがでしたか。

長谷川理事長 当時は高度成長期で、就職活動は非常に楽でした。自動車が好きでしたので、トヨタ自動車販売に興味を持ちました。

立石学長 70年代前半までは高度成長期であったことと、帰国子女などがあまりいませんでしたので、英語やその他の言語ができることが非常に希少価値の時代でしたね。

長谷川理事長 東京外語会に就職相談に来る学生さんの話を聞いていても、今の学生は本当に大変だと思います。今の状況は、学生や学校がいくら頑張っても、会社が変わらないと駄目なのだと思います。会社が変わっていくべきだと思います。海外で仕事をしていたので、日本に帰ってくると日本って何かおかしいなというのはとても感じました。

p2.png立石学長  トヨタに入社されて、約40年間、長く勤められましたが、その間のご活躍は、特にアジア畑ということでしたけど、どのようなお仕事をされてきましたか。

長谷川理事長 最初からそうではなかったですよ。入社して翌年すぐにタイへ行ってこいと言われましたが、これは研修で、向こうでやった仕事というのはわかりやすく言えば雑用係です。約2年間、タイでいろんな部門を転々としました。営業部や現場の部門などを経験して日本に帰ってきました。そして配置されたのが、部品を管理して販売する部門でした。その部品というのが何十万点もありますから、それを管理するためにコンピューターが必要だったので、外大を卒業しているのにコンピューターの仕事をずっとやっていたのです。

立石学長  その頃からすでにコンピューターの知識は不可欠だったのですね。

長谷川理事長 その後に営業を希望して、それ以来、東南アジア・中国・中近東などの海外営業を担当することになりました。若い頃に製品管理をしっかりやったおかげで、自動車がどういうものか理解でき、その後の営業にも非常に役立ちました。

立石学長 外大生は、数学があまり得意じゃないと言われますけど、長谷川さんはどうでしたか。

長谷川理事長 私も得意ではないですけど、会社では、統計学の簡単な知識や管理会計手法などは絶対に必要ですね。財務諸表がきちんと見られること、それを利用すること。マーケティングリサーチには、初級的な知識だけで十分ですが必ず統計学が必要になります。

立石学長  そういうことを毛嫌いせずに大学時代に学んでおくといいですね。今、一橋大学との連携で経営学や経済学の教授に来ていただいています。学生さんたちにはどんどんそうした科目も履修してほしいなと思っています。

長谷川理事長 はい、その通りです。学生時代にやった方がいいと思います。私は教科書を引っ張り出して学びなおしましたから。本学の監事の際にそうしたことをいろいろとアドバイスさせていただきました。

立石学長 言語と地域のスペシャリストとして世界の各地に抵抗なく入っていける異文化理解を持った人材であることと合わせて、経営学などの基礎知識も必要ですね。

長谷川理事長 ええ、そうだと思います。それと今おっしゃったことと関係しますが、実社会に出て役立ったのは、国際見本市などに呼ばれて行った際に多くの外国人と話す機会があるのですが、私は学生生活を通じて外国人と話すことに慣れていたので、全く抵抗なく話をすることができたこと。

立石学長 そうですね。その点で、本学は今、キャンパスそのものを異文化交流の場とすべく、IJ(International &Japanese Students)キャンパスといって、できるだけ外国からの留学生と接する機会を持てるような仕組み作りをしています。

長谷川理事長 大事なことですね。留学しなくても外国人留学生などと一緒に勉強でき生活できる、とても大事なことです。

立石学長 いろいろな意味で物怖じしない学生を育てたいです。

長谷川理事長 はい。本学監事であったときに亀山前学長にもよくお話ししたのですが、少数言語を学んだ人が本当に少数言語を使って仕事ができるか、実際はなかなか難しいと思います。今はどこの国へ行っても英語で話すようになりました。インドネシアやベトナムやどこへ行っても、ビジネスで使用するのはだいたい英語ですし英語だけで十分です。しかし、会議や仕事が終わった後、現地の言葉で楽しく会話する、そうすると雰囲気がガラリと変わります。次の打ち合わせや会議がすごくスムーズに進むのです。これはとても大きなことです。外大で少数言語を勉強していたので、どこの地域に行ってもその地の言語習得が早いのですね。抵抗がないというか。

立石学長 40年近くトヨタで活躍されて、その後、首都高速道路に移られましたが、このあたりはキャリアとしては珍しいのではないでしょうか。

長谷川理事長 はい、珍しいです。ちょうど民営化された時でした。首都高速道路に入って、若い頃にもう少し官の人と一緒に仕事をすればよかったなと思いました。官と民ではやはりカルチャーが違いますね。そのようなところに行きましたが、彼らのためになるようにしてあげなくちゃならないと思いました。現場へ行くと、物がとても乱雑に置いてありました。首都高の物、出入り業者の物、捨てた物、これから使う物、これが本当にわからない状態でしたので、それらをきちんとしなさい、といつも口うるさく言いました。そしたら、やはり優秀で真面目な人たちですね。あっという間にびしっとやりました。首都高の場合、会社にして良かったと思います。税法、会社法の適用を受けて、財務諸表を必ず公表して新聞にも掲載されます。国立大学もむしろ財務諸表を民間並みに作って、株主を国にして会社にしちゃった方が、すっきりするのではないかと思いました。ただ、運営費交付金の説明はしにくいですが。

立石学長 高等教育機関が独立採算というのは非常に難しいですね。特に人文社会系の場合には、発明であるとか技術開発ではなくて、まさに「人づくり」ですので、成果が目に見えにくい。そして本学のように少数言語・地域などの教育を少人数教育で行っていると、どうしても採算が合わない。やはり国家戦略として、ある程度は手厚い補助がなければいけないと思うのですが・・・。本学でその後、監事を2年間務めていただきましたけど、その間に特に印象に残ったことはございますか。

長谷川理事長 亀山前学長の頃ですけど、本学発展のためにいろいろとやってくださいと言われましたので、現在の「グローバル・キャリア・センター」や「グローバルビジネス講義」のようなものを提案しましたし、あとはインターンシップ、特に海外へのインターンシップを学生さんに行かせた方がよいということを提案しました。それらは今まで動いていますね。

立石学長 そうですね。当時私は学生担当の副学長でしたが、長谷川さんからいろいろなアイデアを出していただいて、実際にご支援いただいて、本学が本格的にキャリア形成への取り組みを行っているのは、長谷川さんのおかげです。

長谷川理事長 国立大学では割と早い取り組みですね。良かったと思います。

立石学長 長谷川さんの厳しいご指摘やご支援のおかげで、本学は近年かなりしっかりしたキャリア支援を行ってきましたので、最近では、企業の人事担当者の評判もずいぶん高まっているようでして、日経キャリアマガジン『就職力ランキング』の企業人事担当者への大学のイメージアンケート調査で、京大、筑波大、東大に次いで総合4位にランキングしました。本当にこうしたキャリア形成支援の重要性を感じました。

長谷川理事長 「行動力」が特に高い評価で確かトップでしたね。私も本学の学生さんたちを見ていて感じていました。今でも仕事で時々アジアへ行くことがあるのですが、その際に東京外語会の方々や日本からの留学生と集まって食事をすることがあります。その時に本学の学生はとても行動力があると感心しますね。特に女子学生がものすごいです。これからも頑張ってほしいです。

立石学長 そうですね。そして、監事で本学の発展のためにご協力いただいた後、東京外語会の理事長に就任されましたが、その辺りのお話や抱負を聞かせていただけますか。

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長谷川理事長 東京外語会『会報』の理事長就任挨拶に記したことを重点的に取り組んでいこうと思っています。まずは財務基盤です。お金がないと何もできないのですね。会費にあまり頼り過ぎず、何か他のことでも収益を上げられる方法を考えたいと思います。あとは、現役学生・大学へのサービス向上です。私は常々、「役に立つ外語会、頼りになる外語会」と言っていますが、そのような組織になれるように一生懸命に取り組んでいます。東京外語会がこれまでどのような取り組みをしてきたかを今書き出して整理しています。継続するもの、重点的に力を入れるものを整理するとともに、そういったことを明示して、会員の皆さんに理解してもらうことも大事だと思っています。

立石学長 そうですね。せっかく会員になっても、東京外語会がどのような活動を行っているかわからないと残念ですよね。

長谷川理事長 そうなのです。理事長就任時に、上原前理事長と立石学長に言われて、若い卒業生と現役学生と少人数で食事をしました。その際にいろいろな話をしましたが、ああ、そうかと思ったのが、「東京外語会って何をしているのですか?」という質問。これは課題だなと思いました。もともとはOBやOGの懇親や親睦の会でしたが、大学や現役学生へのために何をするかも重点的に考えなければならないという認識を持ちました。今いろいろと取り組みを始めています。「東京外語会プラザ」を学内に設置していただいて、外看板を数カ所に出していただきましたが、これは大きいですね。学生さんたちがプラザの存在を知って、今では学生さんたちが気軽に入ってきてくれるようになりました。

立石学長 そうですね。以前は本郷サテライトに本部があるのみでしたが、学生にとっても、留学や就職試験など、さまざまなことを先輩であるOB・OGに相談できるようになったのはとても良いことだと思います。それから今、東京外語会の新しい取り組みとして、本学との連携で新たな事業展開を考えていらっしゃいますね。

長谷川理事長 はい、最近は外国人旅行者が非常に増えてきています。そうした時に、本学や本学OB・OGの積み上げてきたノウハウ・育った人材で何かしらの貢献ができるのではないかと考えています。

立石学長 昨今、大学も自己収入を、外部資金を、と盛んに言われています。広い意味で社会に開かれた大学として、私たちが提供する知識・ノウハウで一定の見返りを受ける収益事業を展開していければ本学としても有難いです。

長谷川理事長 そうですね。何回も言うのですが、お金がなければ何もできない。建学150周年基金へのご支援も全面的に協力したいと思いますし、多くの方々に協力いただけたらと思いますね。

立石学長 最後になりましたが、本学そして学生にひと言いただけたらと思います。

長谷川理事長 積極的に動くこと。日本人は割と遠慮しがちです。日常の小さなことでも、あることに対して、もっと積極的にチャレンジして臨んだら良いと思います。それから、「国際化」とよく言いますが、今では外国からどんどん人が入ってくる時代になりました。日本にいる人たちが国際化しなければならない時代です。本学・本学の卒業生・在学生がそれを引っ張っていければと思います。

p4.png立石学長 そうですね。国際化を牽引する大学としてますます発展していきたいと思います。本日は長時間どうもありがとうございました。

長谷川理事長 ありがとうございました。

 

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